登録商標「祖谷そば」
徳島県西部、高知県との県境の山岳地帯の祖谷地方。
平家の公達が落ち延び、追っ手に見つからないように山奥に入り身を潜めて生活していたという落人伝説があります。
この集落へ通じる道はただ一本、そして最後には深い崖の谷川があり、これが天然の堀となって集落への進入を防いでいました。
この集落と外部との唯一の連絡手段は、この谷川に架かる吊り橋でした。
この吊り橋は葛を編んで作られています。万一、追っ手が近づいた場合に、葛を切り落とすことで、敵の侵入を防ぐためです。
この吊り橋は「祖谷のかずら橋」と呼ばれ、日本三大奇橋の一つとして有名です。
こんな社会的背景から、この地方では外部との交流をあまり持たずに閉鎖的な生活が営まれていました。
冷涼な山間部のため米は栽培できず、そば、栗、稗等の穀物が主食となっていました。
そして、この地方で食べられてきた穀物加工品の一つが「そば」でした。
小麦粉等のつなぎ粉は手に入らなかったため、自然薯等でつないでそばを作っていました。
全て手作業、そしてつなぎ粉がないため切れやすい、だから、かなり太めのそばでした。
また、そば殻に近い部分まで挽いた黒いそば粉を使用するため、色目はかなり黒いそばでした。
これが「祖谷そば」の由来です。
これが非常に素朴なそばとして、少しづつ有名になりました。
ただ、太めで切れやすいため、一般に普及するためには、二つの改良が必要でした。
一つは、麺線をもう少し細くして、茹で時間が3分程度で済むようにすること。
もう一つは、つなぎ粉を使用してキレギレにならない麺にすること。
この二つをクリアーして、祖谷そば(生麺)を市販用として販売することが出来るようになりました。
いわば、今風にアレンジしたそばとしてスタートすることになりました。
尚、「祖谷そば」は登録商標です。
現在、基準を満たす徳島県内の数社が商標使用権を得ております。 |